
「うたうこと」
フレデリックフースラー先生とイヴォンヌロッドマーリング先生の共著「うたうこと」(音楽之友社)という本があります。
そこには、『人は歌うために生まれてきた。ボイストレーニングとはセラピーであり、医術であり、外付けにトレーニングで足すことではなく、文明社会で使われなくなってしまった、失われた機能を再生させることだ。』とあります。
国家資格の鍼灸師免許を取得
この本に書かれている解剖生理学の部分を納得がいく形で読み解けるように、解剖学、生理学、病理学、東洋医学など真剣に勉強し、国家資格の鍼灸師免許を取得しました。
国家資格を取得できるほどまでに「解剖生理学」を勉強したからこそ、ほとんどのボイストレーナーが見落としている「あること」に気づくことができました。まだまだ道半ばですが、だいぶ発声のことが分かってきました。絶対があるわけではなく、謙虚な姿勢がとても大事だと思っています。科学や生理学は、時代が進めば、新発見があり、常識が書き換えられることが多々あるからです。
「科学的な」という言葉に絶対的な正しさを見出すのではなく、解剖学などの基礎知識は旅をするときの地図の様なものです。私達現代人はどんな人でも皆多かれ少なかれ、音声衰弱症という病人なんだというのがフースラー先生の考え方の基本になります。ボイストレーナーは、生徒さんとの実践のレッスン一回一回が、修理が必要な楽器を目の前にした楽器修理人と化さなくてはならないのです。どの部品が動いていない音なのか、どうしたら部品を動かせるようになるのか、音で聞き分けながら「修理」を進めます。たいていの楽器は、土台が崩れているので、時間をかけて土台を構築していきます。様々な練習をする前に、この土台の構築をしなければならないことも「うたうこと」にはしっかり記載されています。
それぞれのお悩みに
歌うときの呼吸や息が続かずに悩んでいる方
低音、高音など声が出しにくくて悩んでいる方
声楽、邦楽など様々な歌唱ジャンルの習い事で行き詰まっている方
いつまでも歌えるためのメンテナンスをしたいプロの方
解決したい疑問点を持ったボイストレーナーの方
どの発声法もしっくりこない、イマイチ納得できない方
自分から出る気持ちの良い声にびっくりして、開放感、自由を味わいたい方
外国語学習の際、発音を良くしたい方
一歩を踏み出したいけれど、私なんかでいいのかしらと思っている方
そんな方のお力になれるかもしれません。フースラーの『うたうこと』には、それほど衝撃的で目からウロコのことが記されています。ただ、これは解剖生理学の視点があって初めて、本当の意味で読み解ける内容だったと確信しています。
人は歌うために生まれてきた
一般にフースラーと言えばアンザッツ、のように言われがちですが、
アンザッツの章はたったの9ページしかなく、それよりの前の章に、断然大事なことが書かれているのです。
そして何より理屈だけではなく、体でわかることが大切です。
そこに凄いや偉いはありません。誰かと比べることでもありません。
人は歌うために生まれてきた。
そのことがほんのひとかけらでも実感できるように、
一緒に歩んでいけたらうれしいです。
必要なのは「時間」
内在しているけれど、普段は使わない筋肉や神経に対するアプローチしなければならないので、必要なのは「時間」になってきます。体は目覚めているシステムを使う方が断然簡単なので、今まで歌ってきた(うまくいかない)システムや飲食するシステム、言語をしゃべるシステムを簡単に歌声形成に代用してしまいます。根気よくボイストレーナーと二人三脚で習慣付づけない限り、独学での改善は難しいものです。
「すぐに出来るようになる」そんなうたい文句に乗ってしまわないでくださいね。
赤ちゃんだって、ハイハイが出来るまで、立ち上がれるまで、すんなり歩けるまで、段階に応じて、体が覚醒するには、それなりの時間が必要なのですから。
そのことは、どんな先生に習うにしても忘れないで下さい。
未開発の膨大で自由な歌唱システムへのアクセス
そして、個人個人、持っている身体の癖や能力は千差万別です。
YouTube動画で独自にお金をかけず習得しようとすることは、
大変危険であり、どんな技芸も対価を払わずして得られるものだけ得ようという心根は捨て去るべきだと考えます。ちょっとしたコツの様なものを得たい場合は、有益な時もあるでしょう。
でも、やり方の習得ではなく、うたうこととは、すでにあなたの中にある、未開発の膨大で自由な歌唱システムへのアクセスなのです。それは、安全便利に暮らしている文明人の私達では、閉ざされてしまった回路である、というその発想がないとある一定の声を固定してしまったり、自由から遠ざかってしまい、うたうことが辛くなってしまうかもしれません。その罠にはどうかはまりませんように。
「自由で楽しい。体は大変だけれど。」この感覚があれば、大きく誤った方向に舵を切ることはないと思います。





